私たちは、食や農を通じて持続可能な暮らしをしながら、個性や能力、特技などを社会のために生かして生きる暮らし方を実現したいと考えています。屋号の"かぐれ"は万葉集に登場する古いことばで"寄り集まる"という意味があります。想いを同じくする人たちと、大地とつながりを感じながら、様々な知恵と、期待と、情熱が寄り集まって、子どもから大人までみんなが幸せになれる場所を未来へ残していきたいと思っています。
消費するだけなら誰でもできます。今、必要なのは供給者です。食農体験を通じて自給する楽しさを感じてもらい、生み出す力=生き抜く力を高めていきたいと考えています。
菜園生活かぐれでは、自分たちでお野菜をつくる「会員制コミュニティ菜園」をはじめとして、家庭の生ごみから堆肥をつくるコンポスト、農作業のお手伝いや体験イベント、研修などを通じて自給する楽しさを伝えています。
私たちがお野菜を作っています!
家事・命に近い仕事
新型コロナウイルス感染症に対して、業種によっては在宅勤務になったり、各種店舗や施設が休業になったりという対応がなされています。家で過ごす時間が増えたり、これまでの外部サービスが利用できなくなったりした影響で、料理をしたり、掃除や洗濯をしたり、野菜や花を育てたり、大工仕事をしたり、介護や看病をしたりというように、家事、あるいは、「命に近い仕事」にあてる時間が増えたという方も多いと思います。
外部サービスを利用することに慣れた者には不便なことではありますが、家事、「命に近い仕事」がまず持って顔の見える他者を宛先とする行為であることは、新型コロナウイルス感染症によってもたらされた状況が、効率化とは真逆の「ていねいな暮らし」へとつながる可能性ではないかと思いますし、可能性へとつなげていくべきことだと考えています。
アフターコロナにおけるリアルな場所
アフターコロナにおいては、他者に対する信頼をどうやって回復するかが大きな課題になると考えています。ここで大切になるのが、「眼の前にあるものを手がかりとして、・・・・・・不在のものへの心のたなびき」としての想像力ではないか。「小さな相互扶助的な共同体」における顔の見える他者を宛先とする家事、「命に近い仕事」は、「他者の身体が経験する生理的な快適さを想像的に先取り」したり/されたりする機会となる。これが、他者に対する信頼を回復させる基盤になるのではないかと考えています。
「小さな相互扶助的な共同体」として、まず家をあげることができますが、先に見た通り、新型コロナウイルス感染症によって第一の家、第二の職場、第三の場所としてのサードプレイスの境界は揺らぎつつある。そのため、次のように第一・第二・第三の場所それぞれから、「小さな相互扶助的な共同体」へ迫り出してくる動きが必要とされると思います。
第一の場所(家):住み開き、シェアハウス、託児所、宅老所、ホームホスピス、脱施設化、職住近接
第二の場所(職場):コワーキング・スペース、ファーマーズ・マーケット、個人経営のお店
第三の場所(サードプレイス):まちの居場所、コミュニティ・カフェ、地域の茶の間、コミュニティ農園
→それぞれの場所から「小さな相互扶助的な共同体」へ
実はここであげた動きは、日本では2000年頃から同時多発的に生じていたもの。今回の新型コロナウイルス感染症はその動きを加速させたと捉えることができるかもしれません。
人は、遊び、学ぶことで、生きる力を強くします。その力を育むことが「人づくり」の出発点だと考えます。遊び、学んだ基盤は本能に刻まれていきます。
今、SDGsをはじめ、全人類的な課題の解決が急務です。しかし未知なる課題には、模範解答はありません。求められるのは、「既成の概念に囚われず正解のない課題に挑戦する追求力」、「仲間に期待し応えることで活力を高め合う充足力」といった人本来の力です。その土台となるのが、原哺乳類の時代から進化の過程で受け継がれてきた「遊びと真似の本能」です。
何かを生み出そうとする時、人は集団をつくります。集団同士が協力します。その「関係づくり」で重要なのが、皆を結束させる情熱です。
近年、人びとの意識や市場経済のあり方が大きく変動しています。企業をはじめ生産集団は、変化に適応し、新たな価値を生み出すことが求められています。その最先端では、企業の枠を超えた共創関係が重要になります。開かれた関係を築こうとする時、集団はそのあり方から問い直されます。拠って立つ実現基盤は、時代や文化を超える情熱にあると考えます。
「地域づくり」に大切なのは、みんなで地域課題を共有し、解決していくことです。そのために、地域の多くの人が主体的に参加する「共同体」が運営され、みんなの「繋がる力」を育んでいくことが重要です。
明治以来、人びとは豊かさを求めて農村から都市を目指したことで、地域共同体は衰退しました。暮らしに不可欠な子育て・学び・福祉といった課題は、家庭や地域の手を離れていきました。その一方では、昨今の大災害やコロナ禍などの「生命を直撃する危機」が頻発する中で、皆と繋がり、安心して暮らしたいという意識が高まっています。そのような新しい集団づくりの潮流を加速させるための地域の拠点づくり・集団づくりが必要となって来ています。
持続可能性は、これからの「社会づくり」において重要なテーマです。自然や歴史に学びながら、身近な「循環する力」を国や地球レベルに広げていく必要があります。それは地域活性化の目指す「活力づくり」に通じ、その仕事は社会そのもののデザインに及びます。
私たちは経済発展によって物的豊かさを手にすることができました。一方、都市と農村・生産と消費が分断するなど、多くの課題を残しています。しかし、地方に目を向ければ、都市にはない美しい風景、生産者の力強さ、自立的で温かい相互扶助のコミュニティに出会うことができます。そこで、都市と農村を「循環」というテーマで再び繋ぎ、生産ネットワークを再構築する活動が今求められています。